一次創作『宿無し魔王放浪記』

宿無し魔王放浪記

第一章

3・接触と暴発

自爆し打ちひしがれる主をその寝室に残して辞したギリアムは血のように赤い絨毯で覆われた廊
下を自分の執務室へと向かって歩いていた。毛足の長い絨毯が足音を吸収してしまうので、鈍く黒く光る石材で構築された天井の高い廊下にはまったく音が響いていない。

 その不気味なまでに静かな廊下をその外見にこそ相応しいゆっくりとした確かな歩調で歩きながらギリアムは寝室に残してきた自分の主のことを考える。人間にしては――人間の少女にしては随分と風変わりな人物であった、と。

 ギリアムは、魔界に住む魔族にしては人間に対する偏見や蔑視をさして持たない男だった。とはいえ、皆無というわけではない。力ある者が無き者に対して抱く自然な――それと意識しない程度の優越感に近い物を彼は抱いていた。人は弱く、哀れな存在だ、と。彼は先代魔王の政務を補佐する宰相の地位に就くまで――いや、自分の家であるウルベルト伯爵家の当主の座を父親から譲られる前の酷く若い頃、青年と呼ばれていた時分に、人魔に関わらず若者が持ち合わせている冒険心の発露として、魔界を抜け出し人界を放浪していたことがあった。そこで知った人間というものは、力が弱く寿命が短いことを除けば自分たち魔族と大差ない存在だった。

 そして、自分たち魔族と同じ様に――あるいはそれ以上に自分よりも力をある存在を畏怖し、嫌悪する。魔力を隠してしまえば人間と変わらぬ姿であるギリアムがそれと隠し近付いた人間たちは、ふとしたことで自分が魔族だと知るや否や、彼を恐れ、遠退いていった。それこそ老若男女力の在る無し愚賢の別なく、だ。

(だが――)

 ギリアムはそんな彼の知る人間たちと、新たな主である霧香がどうにも違うように思えた。自分たち魔族に比べて酷く早く成長する人間は、魔族に比べて外見と中身の成熟具合がつりあわない。例えば、霧香のような見た目の魔族がいたとしても、その中身は外見よりよほど歳経た存在であり、種族や個体によって異なるが人である霧香よりよほど分別のついた存在だ。だが、人間は違う。早い成長に比べ幼い精神。それが人間だ。

しかし、あの主は。

ギリアムは思う。まるで魔族のような振る舞いを見せていた――と。彼の知る人の少女というのは、
理解の至らない状況やどうにもならぬ状況に陥ったとき泣き叫び喚き散らすものだった。無論、彼は己が知る知識のみで凡てを類型化するほど愚かではないので、凡てがそうだとは考えていない。だが、それを勘案しても霧香は落ち着き過ぎていた。目を覚ました直後や自分が元の世界に戻れぬと知ったときこそ狼狽し落ち込みはしたが、けして喚き散らしたりはしなかった。逆に開き直り、それならばと己が現状を肯定しその上で為すべきことは、と問うてきた。

育ちのせいか、はたまた持って生まれた性質か。

加えて、あの魔力。なるほど魔界と魔界に満ちた魔力の代行者にして調停者であり統治者である
魔王の力を継いでいるだけあって大したものだ。が、あの時点で霧香が見せた魔力はギリアムよりよほど弱いものだった。だからこそ、荒れ狂う魔力の奔流のなかでギリアムは平然としていられたし、その魔力を封じることができたのだが。見るべきどころは魔力の量よりも、生まれて初めて接した『魔力』というものをああも簡単に引き出し、制御してみせたことだろう。

生まれついた瞬間――、否、生まれる落ちる前から魔力と共にある魔族と違い、霧香は人間だ。
それがああも容易く魔力を扱ってみせた。まさに瞠目すべきことだ。あるいは、人が母親の腹から生れ落ちた瞬間に羊水のなかで呼吸していたことから外気を肺で取り込み呼吸することと同じなのかもしれない。

で、あるならば。

霧香こそはまさに魔王としての資質を正しく備えた存在なのか。無論、先代陛下の選定を疑ってい
るわけではないが、次代の魔王が人間であると知ったときにはどうなることやら、と思ったものだが、これならば安心出来る――かも知れない。まぁ、問題は山のようにあるが。

と、そんなことをとりとめもなく考えながら廊下の角を曲がり自分の執務室の前に出たギリアムは、
その扉に身を預けてこちらを見る若い男に気付いた。足を揃え姿勢をただし、腰を折り頭を下げて男に礼をする。

「魔王が目覚めたそうだな、ギリアム」

「は、つい先ほど目覚めまして御座います。クラヌウス殿下」

クラヌウス、と呼ばれた歳若い男は、ふン、と鼻を鳴らすと黒に近い灰色の髪をかきあげる。誰の目
から見てもそれと判るほど不機嫌そうな表情を顔に浮かべて口を開く。その口からは発せられたのはやはり、表情と同じように不機嫌さを不足を感じさせないほどに含んだ声だった。

「魔王、魔王か! たかが人間の小娘がなッ!!」まだ見ぬ霧香に対する嫌悪を隠そうともせずにクラヌウスは言う。「世も末だなギリアム? 下賎な人間が魔王とは。ええ、そうは思わんかギリアム?」

「クラヌウス殿下」顔は毛ほども変化させず、しかし、内心で渋面を作ってギリアムは答える。「どうぞお言葉を慎まれますよう。魔王陛下に対してそのようなお言葉を向けたと知れれば、殿下に叛意を持つ諸侯がいらぬことを言い出さぬとも限りませぬがゆえ」

「はン! 連中か。俺を出来損ない呼ばわりするあの連中。判っている、判っているとも」

いまにも癇癪を爆発させそうなクラヌウスに、ギリアムは内心でやれやれと溜息をつく。さきほど彼が
思った問題、その筆頭が先の魔王の嫡子であるこのクラヌウスであった。五代前の魔王の子孫との間に先代がもうけた子供。美しい母親ゆずりの容姿と、魔王であった父親ゆずりの強大な力を誇るが――それだけの男だ。魔王の子として育てられたからか、どうにも困った性格になっている。抑えることを知らず、ささいなことで癇気を撒き散らす男。加えて、自分に魔王の資格がないと判ってからその性格に拍車が掛っている。人間出身の魔王である霧香にいらぬ手出しをする者がいるとすれば、このクラヌウスはその筆頭候補といったところだろう。

「ギリアム、で、どうだその人間の小娘は」

果たして何を指して『どうだ』なのかと考えつつ、ギリアムはこの扱いの難しい先代の一粒種に答
える。

「はっ、黒髪と黒い瞳を持った旧き言い伝えに出てくる女神のような少女で御座いました。加えて、生まれて初めて魔力を扱うにも関わらず容易く御してみせたことからも十分に魔王たる資質を備えているかと」

「ふン、資質。資質か」

ギリアムの返した答えの後半に、苛立たしげに鼻を鳴らすとクラヌウスは背をあずけていた扉から
離れ、ギリアムに背を向けると廊下の向こうへと去っていった。ギリアムは次第に小さくなっていくその背を眺めながら小さく溜息をつき、思った。いらぬ面倒を起こしてくれなければよいのだが、と。


自爆から霧香が辛うじて立ち直った(いまだダメージを引き摺っていたが)頃、退室の際にギリアム
が遣すと告げた侍女――判り易く言うとメイド――たちが霧香に朝食を届けるのと、彼女が引き起こした破壊の片付けのために霧香にあてがわれた寝室を訪れてきた。

人間と大差ない姿のものや、背に羽があったり山羊のような角が生えていたり肌が青かったり単
眼だったりする様々な侍女たちが手早く、そして的確に手荒く酷い状態になっている部屋を片付け、修復していく様子を感心したように眺めながら霧香はベッドに腰掛け簡易なテーブルに載せられた朝食を片付けていた。

朝食は、一見すると霧香の知る洋風の食事そのものであったが、良く見るとスープの中に入ってい
る具材がまったく見たこともない色合いのものだったり――と迂闊に口にしてもいいものかと悩んでしまう代物だったが、やはり空腹には勝てず恐る恐る口にするとまったくの美味で、結局、霧香は礼儀作法に煩い人間が見れば顔をしかめかねない勢いでテーブルの上に並べられていた朝食をやっつけた。

と、居並ぶ敵を征圧した段になって霧香は自分の傍に控えている侍女――霧香の朝食を用意した
侍女だ――の存在を思い出し、少しばかりはしたなかったかと思い顔を僅かに赤くした。そしてそんな居心地の悪い思いを誤魔化すように、霧香は侍女に朝食の礼を告げた。

「ご馳走様。すごく美味しかった」

「お口に合いましたようでなによりです」

霧香は自分の礼に対して柔らかな仕草で一礼して返す侍女をそれと判らぬ程度に観察する。ぱっ
と見た感じでは人間と大差ない容姿の女性だ。実年齢はどうかしらないが、見た感じは二〇代前半といったところか。唯一人間と違うところがあるとすれば、その耳だろう。霧香の判りやすい認識で語るならば『エルフ耳』といったところ。長く、先の尖った人間には在り得ない形状の耳。それが外見的には唯一彼女が人にあらざる存在だと教える証左であった。

だが、それ以外はまったくといっていいほど人間と変わりない。すっと流れるような顔の輪郭に整っ
た目鼻立ち。やや黒味がかった青く長い髪はゆるやかにウェーブしており、手櫛を通せばさぞ触り心地が良さそうだと思わせる艶をたたえている。背は一六〇あるかないか、紺のメイド服のようなドレスから見て取れるプロポーションは特殊な趣味の持ち主でもなければ涎をだらだらと垂れ流して飛びつかんばかりに見事なものだ。

――――悔しくなんてないわよ?

劣等感をちくちくと刺激された霧香は内心で呟く。目の前にいる女性の容姿は男性であればそうあ
れと望むまさに女性の理想、その具現といった按配だった。や、だから悔しくなんてないんだってば。

「えっと、ウィルニアさん――だっけ?」

部屋の片付けと修繕を終わらせ、霧香に一礼して退室していく侍女たちに礼を返しながら、朝食を
用意した際に今日から霧香附きの侍女として仕えると伝えてきた女性に霧香は小首をかしげながら声をかける。

「さん、などともったいのう御座います。どうぞウィルニア、とお呼びくださいませ。陛下」

「あー」

男どもを魅了してやまないであろう柔らかな笑みを浮かべながら恐縮してみせるウィルニアに、霧香
はなんだかなぁ、と頭を掻いた。ギリアムの時は混乱からの回復と状況認識に気を廻していたためにさして気にならなかったのだが、ある程度落ち着いてくるとウィルニアのような侍女たちが見せるこうした恭しい態度というか接し方は背中が痒くなってくるような気分になって落ち着かないのだ。経済的な、と枕詞のつく視点から眺めるならば日本のどこで石を投げてもぶつかるような平々凡々とした中流家庭に生まれ育った霧香は、こうした扱いをうけるのははじめてであった。加えて、自分のことは自分で、という躾をうけてきたので朝食を摂ろうとしたさいにウィルニアが上げ膳下げ膳で世話をしようとしたことには思わず閉口してしまった。王侯貴族じゃないんだから、と霧香は内心溜息をついた(事実魔王というものであるということに関しては心に棚を作って忘却した)ものだ。そういうわけで、

「その、陛下とか、やたらめったら丁寧な扱いどうにかならない?」

霧香は思わず不満とまではいかないが、待遇の改悪を要求した。改善を願うことはあっても改悪を
願う人間というのも珍しいだろう。そんな、霧香にウィルニアは戸惑うような表情を見せた。

「そう仰られましても……陛下を無下に扱うことなど出来かねますし」

悪意ある扱いじゃないってのが問題よね。霧香は小さく嘆息した。相手は、使えるべき主君に対し
てそうあるべきである態度と接し方で接しているだけなのだ。それは、まぁ、判らなくは無い。だが、この調子で続けられれば息が詰まって仕方ない。

「ほら、せめてギリアムさんみたく名前で呼ぶとか。ね?」

「宰相閣下のように振舞うなど恐れ多く――」

ああ、駄目だ。ますます恐縮したウィルニアに霧香はもう一度溜息。ううん、どうしたものか。とりあ
えず問題を保留――けして諦めたわけではない――して、霧香は別の話題を切り出した。ダイレクト・アプローチが駄目ならば、インダイレクト・アプローチ、つまりは搦め手で攻めるのは戦略戦術の基本中の基本だ。

「そういえば、ウィルニアさん」

「さん、などと――」

「ああ、とりあえずそれはおいといて。ウィルニアさん、魔族って人間を見下してるんでしょ? 少なくてもギリアムさんはそう言ってたけど」

「はぁ。魔族の中にはそうした方々が多いのは事実で御座います。凡て、とは申しませんが」

いきなり何を言い出すのか、とウィルニアは自分の主に一瞬怪訝そうな顔をしたが、それでもきっち
り答えを返す。

「でも、ウィルニアさんや他の侍女の人たちは――人? まぁいいや人たちはそんなそぶりちっとも見せなかったわよね? どうして?」

むしろそうであった方がなんぼかマシだとでも言いたげな口調で霧香は問う。実際、そっちのほうが
有難かった。性格が性格なだけに、霧香は敵意や悪意を向けてくる相手に事欠かなかったし、そのあしらい方も心得ていた。敵意や悪意が自分に害にならぬ程度であれば空気のように扱い、そうでなければ向けてくる感情が畏怖や恐怖に変わるようにあらゆる手段を用いて仕向ける。基本的に家を一歩出れば自分には七人は敵がいると少しばかり妙なバイアスのかかった考え方をする霧香は、味方に囲まれるよりも敵が自分を囲んでいるほうが安堵するという困った性根の人間なのだ。従って、自分にはさっぱり身に覚えの無い理由で魔王とされて与えられたこの場所でも、恭しく接せられるより、「はん、人間風情が何が魔王だ」といった扱いをされたほうがなんぼか心休まるのだ。そうすれば、彼女は何の気兼ねもなく魔王として彼らに接し、捻じ伏せ、従わせていくだろう。だが、この侍女たちはそうしたそぶりをまったく見せない。だからこそ慣れないという以前にやり辛いのだ。

「どうして、と申されましても」いよいよ困ったという感じでウィルニアは言葉を慎重に選びつつ霧香に答える。「陛下が如何なる出自の方であろうと、私どもが仕えるお方であることに代わりはありません。で、あるならば臣下としての節度と礼儀を持ってお仕えするのに疑問の入る余地などないのです」

その答えに、霧香はふうん、と眉をあげる。なるほど、教育が行き届いているってわけね? 莫迦
な客に文句も言わず笑顔で応対するホテルマンってとこかしら。まぁ、いいわ。でも、それはようするに私がなんであっても構わない――仕えるのは私じゃなくて魔王という存在、そういうことよね? 気に入らない。自分をどう見ているなんてのはさして気にならないけれど、自分を自分以外の何かとして見られるのはまったくもって気に入らない。ギリアムさんのときは色々あって確かめられなかった――というか、そんな隙を見せてくれそうにないおっさんだったけど――けど、このウィルニアさんは違う。少なくても私附き、ってことは嫌でも毎日顔を合わせるわけよね? 幸い、受け答えの際の表情からしてギリアムさんよりかはやりやすそうだから確かめてみるか。うん、そうしよう。

「じゃあ、ウィルニアさんに一つ質問」なんでしょう? と小首を傾げるウィルニアに霧香は性格の悪さを証明するようなタチの悪い笑みを浮かべて問い掛ける。「ウィルニアさんは人間をどう見てる? 私が魔王じゃなかったら? 何の力も無いただの人間の小娘だったら? どう扱うどう接する?」

嬲り殺す? 取って喰う? と霧香はニヤニヤと言葉をかける。予想外の質問だったのだろう。ウィ
ルニアは問い掛けられる直前の時間から切り取ったようにぴしりと凍りついた。そんなウィルニアに、霧香は少女に笑いかける猫のような笑みを浮かべたまま言う。

「答えられない? でも答えて。なんなら、『魔王の命令』として聞いてあげてもいいわ。さ、答えて。嘘偽りなく――貴女の本当の答えを」

魔界における絶対者――無論、何事にも例外はあるが――である『魔王』の『命令』とまで言われ
てはウィルニアにしてみれば是非もない。魔王附き、という他の侍女より格が上の地位を与えられた彼女であったが所詮は侍女。魔王の命に抗すべき力も地位も理由もない。ウィルニアは、ゆっくりと、だが嘘偽りなど欠片も含まぬ答えを口にした。

「私は」口を開きつつ、ウィルニアはタチの悪い笑みを浮かべたまま自分の答えを愉しそうに待っている主人の顔を確りと見る。「他の魔族の方々と違い、人を下に見る習慣を持ちません。確かに――人間の方々は力弱く、寿命も短い儚い存在ではありますが、私はそれを理由に人間を蔑視しようとは思いません」

嘘は言ってないみたいね。自分を確りと見返しながら言うウィルニアに、霧香はそんな感想を抱く。
アレな性格だけに、彼女は口にした言葉が嘘かどうか見極める目を持っていた。その彼女の目に従って判断を下すならば――少なくてもウィルニアは嘘を吐いているようには見えなかった。悪い人じゃあないみたい。少なくても、同じ人間同士で肌の色がどうだとか信じている神様が違うなどというどうでもいい理由で容易く他者を排しようとする連中よりはよっぽど『良い人』だ。うん、それはいい。でも、

「質問の前半――その答えは了解したわ。じゃあ、後半。こっちも嘘偽りなく答えて頂戴。ウィルニアさんの本心を。貴女の判断基準からすれば多少無礼なものでも全然構わない」

さ、答えて頂戴、というその言葉に、ウィルニアは小さく溜息を一つ。そして、いくらか逡巡するそぶ
りを見せたのち、意を決して言葉を紡ぐ。

「恐れながら申し上げさせていただきますが――」構わないわ、と目で言う霧香にウィルニアは言葉を続ける。「陛下は――人としては大変興味深いお方かと。初めて接する我々魔族を恐れるでもなく、蔑むでもなく、ただそうであると受け止めていらっしゃる、私にはそう見えてなりません。魔族と見れば恐れ戦き遠ざけようと離れようとする人間の方々からすれば非常に珍しい資質かと。私は――」

「――私は?」

性根の悪さをうかがわせる笑みを引っ込め、興味津々といった顔でこちらを見る霧香に、ウィルニア
は、男女の別なく見たものを魅了するだろう笑みを浮かべて、言う。

「……私は、そんな陛下を深く知りたい、御友人になりたい――そう思います」

言い終えて、霧香の発する雰囲気に呑まれて自分が無礼どころの問題ではない言葉を紡いでいた
と気付き、ウィルニアは慌ててその場に平伏した。そして、どうぞ如何様にも御処断くださいませ――と顔をあげずに言う。そんなウィルニアの様子を見て、霧香は流石にやりすぎたかと反省する。が、自然と笑みが零れてくるのをどうにも止められないでいた。うん、友達。友達か。友達ね。口に出さず呟いて、霧香は此処ではない世界にいる数少ない、本当に少ない自分の友と呼べる人たちのことを思う。本当に、良い人ばかりであったと思う。こんな始末に負えない性格の人間と望んで付き合うような馬鹿な――善人。

「ウィルニアさん、顔上げて。ほら、いいからいいから。ね?」

平伏したままでいるウィルニアに顔を上げるように言う霧香。そんな霧香の言葉に従って恐々とした
様子で顔を上げたウィルニアが見たものは、その顔に満面の笑みを浮かべた霧香だった。

「良い人だね、ウィルニアさん。うん、とっても良い人だね。私も、そんなウィルニアさんと友達になりたいよ」だから、と霧香は右手をウィルニアに向けて差し出す。「握手しよ? 私とウィルニアさんが友達になるために。私とウィルニアさんが友達になった記念に」

ね? と笑いかける霧香にウィルニアはどうしたものかとしばし逡巡したのち、「はい、陛下」と霧香
と同じように笑みを返しながらその手を握り返した。が、霧香はそんなウィルニアに判りやすいほどの不満顔で、ブッブーと駄目だしをした。

「いい? ウィルニアさん。何処の世界に友達に向かって『陛下』、なんていう人がいるの。き・り・か。陛下じゃなくて、き・り・か。オーケー?」

りぴーとあふたみー、き・り・か、と告げる主人にウィルニアはおろおろとする。

「で、ですが陛下。臣下が仕えるべき主の名を呼び捨てにするなど恐れ多いうえ、外聞というものも――」

堅いなぁ、と思いつつ霧香は妥協案を口にする。

「判った。人目があるときは侍女らしく陛下でいいわ。でも、こういう二人だけの時は呼び捨てにしてね? 恐れ多いもへったくれもなく、私が良いって言ってるんだから。ね?」

その言葉に、やはりしばし逡巡してからウィルニアは諦めたように小さく溜息をつくと笑みを浮かべ、

「はい。キリカ」

と答えた。傍目から見れば実に微笑ましい光景なのだが、霧香的視点に立ってみると肩の凝る応
対を止めさせたうえに気の置ける友人をゲットするという策謀(後者はまったくの望外といっていい成果だった)が見事功を奏してほくそ笑んでいるという実にアレな結果なのは果たして良いのか悪いのか。とまれ、霧香とウィルニアは種族間や歳の差、果ては魔王と侍女という立場の垣根を越えて友人となった。この時の霧香は知らないが、ウィルニアは霧香がこの世界で過ごし知り合う人々の中で得た(元の世界と同様に)数少ない――そして最高の友人になるのだがそれはまた先の話。

しかし、まぁ、成り立てということもあり、二人の間柄は互いを必用以上に気遣うぎこちないものであっ
た。それでも、同じベッドに腰掛け(畏れ多いと辞退しようとしたウィルニアに霧香がいいから、と押し切った)互いの育ちや趣味、自分たちの年頃の娘でどんなものが流行っているか――という会話を交わしている姿は、本当に有り触れた、そしてだからこそ真実偽り無い友人同士のものだった。二人の語らいは、昼食を摂ることを忘れた霧香が盛大に腹の虫を鳴らしたことでウィルニアが慌てて夕食を用意しに部屋を出るまで続いた。


「ふぃ〜、疲れた〜」

ただでさえ霞みがかかったような魔界の空が、完全に日が落ちたことによって霧香の髪さながらの
深い闇色に染まった頃、霧香は自分を押し返すスプリングの程好い感触を背に感じながらベッドに倒れこんでオッサンのような台詞を口にした。色々と面倒ではあるが図太いことだけは間違いない霧香の神経も、普通に暮らしていればまず一生遭遇することのない異世界拉致と魔王即位というとびきりの異常事態に否応なくストレスに晒され疲労を覚えていた。

まぁ、それも元の世界で得ていたようなかけがえのない友人であるウィルニアを得たことで幾らか緩
和されていた。が、夕食のあとで寝室に繋がる浴室(どうやら、霧香にあてがわれた部屋は魔王の城を訪れた貴人が使うものであったらしく、城にある魔王用の大浴場とは別に浴室が備えられていた)で汗を流そうとした際にウィルニアが付き添おうとしたことで相殺されてしまっている。なんとかウィルニアの申し出を退けることに成功したのは、霧香にとって幸いであったといえる。主に、精神面で。

(つーかあんなたゆんたゆんのおっぱいと一緒に風呂なんか入ったら立ち直れないよねぇ)

別に一緒に風呂に入るのはウィルニアであっておっぱいではないのだが、霧香の脳内ではウィル
ニア=おっぱいという図式が出来上がっているらしい。かけがえのない友人ちゃうんかい、というツッコミがありそうだが『心に棚を作れ』思考を信奉する霧香にとって、それはそれ、これはこれ、ということになるらしい。まぁ、失礼なことにはかわりないのだが。

「何喰ったらあんなたゆんたゆんなおっぱいになるんだか」

風呂から上がったあとで新しく編み直したにも関わらずやはり腰から上が過ぎるほどにジャストフィ
ットしている自分のドレスの胸の部分を見ながら呟いて、霧香は溜息を一つ。えらく盛大な溜息を。女の価値は胸じゃない、とか、歳食ったら垂れるだけじゃない無くていいのよ胸なんか――という自己欺瞞をもってしても、見せ付けられたあのヴォリュームの胸には流石に色々と考えさせられる。畜生、悔しくなんかないぞ。でも正直羨ましい。ああ、もう。

そんな風に霧香が女性――胸のヴォリュームに欠ける女性――特有の悩みに懊悩していると、ノッ
クも無しに豪奢で重厚な造りの扉がいきなり開かれた。

「誰ッ!?」

パッと身を起こし、霧香は警戒と誰何の声を発する。そんな彼女の目に映ったのは、

「はン、人間の魔王か――本当にほんの小娘だな」

不躾な視線で霧香を値踏みするように撫で回すように見る若い男だった。

「誰、と」自分の問いに答えずこちらを小娘呼ばわりする男に、霧香はきつい視線をよこしながら言う。「私は聞いているんだけど。耳が遠いのかしら? 見かけによらず年寄りなのかしらあらあら大丈夫お爺ちゃんとでも言ってあげましょうか?」

警戒してますよー、という雰囲気を隠そうともせず、さりとて戦いたわけでもなく言う霧香の様子に
ふン、と鼻を鳴らして男は答えた。

「誰、か。そうだな、この魔界の――魔王の本当の後継者とでも答えておこうか」

飢えた野良犬のようなぎらついた目で言う男の台詞に、霧香はウィルニアに教えられたことを思い
出した。ウィルニア曰く、先代の魔王陛下にはお子様がいらっしゃいまして――

「――クラヌウス……殿下、ね?」控えめなウィルニアの言葉からでも碌でもないと知れる人となりを思い出しながら霧香は言う。「お初にお目にかかります。『当代の魔王』に選ばれました舞堂・霧香、と申します」

以後宜しく、と告げる霧香の口調は侮蔑と挑発を半々で含み、そしてそれ以外のものを一切含まな
いものだった。基本的に初対面の人間に対しては毒にも薬にもならない対応で応える霧香だったが、クラヌウスに対してはその慣習を適用しなかった。ウィルニアから教えられていたクラヌウスの人物もその理由であるが、それ以上に、クラヌウスの言葉が、態度が、目が気に入らなかった。要するに、霧香はクラヌウスを敵と――少なくても信の置けぬ相手だと認識した。

そんな霧香の対応に、クラヌウスはちっ、と舌打ちをしてみせたあとで敵意と侮蔑を剥き出しにした
言葉を吐く。

「言うじゃないか人間風情が。奴隷宜しく首輪をつけた卑しい雌豚が」


「で、キリカ様はどうであった?」

裁可を下し終えた書類の耳を重厚な机の上で揃えながらギリアムは相手を見ずにたずねる。場所
はもちろん彼の執務室。

「そうですね。言葉を選んで言えば――非常に興味深いお方であると判断します」

仕えるには不足の無い方です――鈴の音を思わせる声と口調で応えるのは、微笑をたたえて彼の
机の前に立つウィルニアだった。そんな彼女に、ギリアムはなにやら思案するように、そうか、と呟いた。ウィルニアを霧香附きの侍女に据えたのは魔界とこの城の政務と維持を司るギリアムだった。その目的は、魔界に不慣れな霧香の補佐と、身の回りの世話。そして監視であった。

ウィルニアとはその親と知り合いであることから、彼女がおしめの取れない赤子の頃から良く知った
仲であるギリアムは、彼女の能力と人柄を買って霧香附きの侍女に選んだ。人間に対してほとんどといっていいほど差別意識を持たぬウィルニアは人柄の穏やかさも相まってまさに霧香附きの侍女として適役といえた。監視に関してはウィルニアには告げていないが、その性格から腹芸をこなすことなど出来ない彼女からそれとなく霧香の様子を聞きだすことなど海千山千の魔界の有力者と丁々発止のやりとりをこなしてきたギリアムにとっては造作も無いことなので問題はない。

「興味深い、か」

ウィルニアの言葉を口の中で鸚鵡返しに呟いて、確かにその通りだ、とギリアムは思った。興味
深い。まさにその通り。物怖じしない性格や、容易く魔力を扱ってみせたこと――いささか材料には事欠くが、それでもそれらの少ない情報を勘案してみるに、舞堂・霧香という少女は先代のような、あるいはそれを凌ぐ理想的な魔王になるかも知れない。まぁ、あくまで『なるかも知れない』というだけだが。少なくても、あの問題児が魔王となるよりもよほどマシだろう。そうクラヌウスのことに考えがいたって、ギリアムは深い溜息を漏らした。

「何も問題を起こしてくれなければよいのだがな」

そう呟くように言ったギリアムだったが、いかな宰相としての能力に不足を感じることもなく、また思
慮深いことで知られる彼といえど、彼が呟いた言葉にウィルニアがその言葉に潜むものを感じ取って同意の頷きを返した今この瞬間、その話題の人物が問題を起こそうとしているとは思いもしなかった。


自分は、王として、王になるべくして生を受けた――そうクラヌウスは幼い頃より考えていた。たと
え魔王の地位が血脈に拠らずただ適性に拠ってのみ受け継がれるものであるという魔界と魔王の長い歴史的事実を知ったあとでも、その認識はまったく変わらなかった。魔王と、魔界の有力貴族の娘との間に生まれた彼は、周囲から蝶よ花よと扱われ、自分が自分と自分の父親である魔王以外の凡てに君臨し崇められる存在だと、であるからこそ自分が魔王の地位を、魔界の絶対君臨者の地位を受け継ぐのだと信じて疑わなかった。

そして、有能であり統治者としてまさに理想的といえる先代魔王の唯一の難点――というよりも世
の父親あるいは親の、それも力在る存在の親に共通の難点、『子供に甘い』ということと周囲の態度と相まって、ふと気付いたとき、彼はどうにも始末に負えない人物と成り果てていた。粗暴、無思慮、癇癪持ち――並べ立てればキリが無いが、少なくても他者の上に立つべき素質を欠片も持ち合わせていない人物だ。無論、周囲――特に宰相であるギリアム――がそう考えようと、彼は構いはしなかった。と、いうよりも考えたこともない。何故ならば彼は(あくまでクラヌウスの思考において)魔王の座を約束されたものであるからだ。であれば他の有象無象が何を言おうと気にかける必要も無い。

だが、彼の認識と彼の周囲をとりまく状況は、父である魔王の寿命が尽きかけ、次代の魔王の適性
を持つものを探す段になって一変した。クラヌウスには魔王たる適性がなかったのだ。クラヌウスは激怒した。五強と呼ばれる魔界の有力者に匹敵する魔力を誇り、魔王の血をひく自分に何故適性が無いのか、と。とはいえ、長い歴史を見れば魔王の子――どうしたわけか、魔王には子を成す力が薄いらしく、子が出来ること自体珍しい――が魔王になったのはたったの二度だけなので別段おかしいくもなんでもないのだが――そんなことはクラヌウスには関係なかった。

彼は荒れた。荒れに荒れた。ただでさえ粗暴であった振る舞いは輪をかけてひどくなり、気に入ら
ないという理由だけで城に仕える下男や侍女を殺めたことなど一度や二度ではない。流石に、子に甘い魔王でもクラヌウスを諌めた(とはいえ、迂遠な形で彼を処断するように提言してきたギリアムに頷くことはなかったが)ことで、訳もなく命を落とす者はいなくなった。が、彼の内心に吹き荒れる嵐が止むことはかった。 そして、彼の内心に吹き荒れる嵐は次の魔王がただの人間に決まったと知った瞬間、最大風速を計測した。そのクラヌウスは、自己の内面に吹き荒れる感情の嵐を今にも暴発させんとせんばかりの心境でその人間の魔王の前に立っていた。

「奴隷とは言ってくれるわね」

なるほどギリアムが自分を人前に出さぬわけだと妙な納得をしながら、霧香は、ゆっくりと自分との
間合いを詰めてくるクラヌウスに吐き捨てるように言った。そんな彼女にクラヌウスは事実だろうがと言わんばかりの態度で鼻を鳴らしてみせた。

「何か違ったか? 下等な、家畜同然の人間め」

魔王になることはもはや叶わぬ――流石のクラヌウスもそれは理解していた。一度魔王の座に収
まったものからその地位が移るときは、その者の寿命が尽きたときのみ。そして、魔界と魔界を満たす魔力が消えでもしない限り、魔王を弑することは不可能。その二つは、魔王に絶対の加護をもたらす。少なくても魔界の住人であり魔力の恩恵を享受している魔族に魔王を傷つけることは出来ない――彼もそのぐらいのことは理解していた。

だからこそ、彼は自分が支配者になるにはどうすればいいか考え、答えを得た。魔王を傀儡とし、
自分が操ればいい。なるほどある程度理にかなった思考である。が、彼に腹芸陰謀その他手管を尽くして魔王を傀儡にする術などなかった。というより生まれてこのかたそんなことをしようとしたことがないのでそのことすら思い至らなかった。そして、彼が魔王をどうやって傀儡にしようと目論んだのかというと。

「ふン、身体のほうは随分と貧相だが」余計なお世話だコン畜生、という霧香の刺すような視線を受け流しクラヌウスは舌なめずりする。「なるほど、ギリアムが言ったとおり見事な黒髪と黒瞳だ。顔の造りも随分上等だ」

目つきと態度は気に入らないが、というクラヌウスは下卑た表情を作りながら、じりじりと後退する
霧香との距離を詰める。魔王が女だと知った時、彼はとるべき手段を確信した。犯し、嬲り、奴隷にしてしまえばいいだけだ――彼はそう判断した。弑し奉ることは叶わねど、肉に奴隷としての証を刻むことぐらいは出来よう。犯して言うことを聞かせてしまえばいいというのは女性を随分と莫迦にした考えであるがクラヌウスというのはそうした人物であった。

とはいえ、それを実行するには魔王が魔王たる所以の一つである他を圧してやまない膨大な魔力
――魔族の力の上下は基本的に魔力の多寡で決まる――をどうしたものかと悩んだが、それもあのいけ好かないギリアムがそれと知らずに解決してくれていた。魔力を封じられた今の霧香は『傷つかぬ』というだけのただの小娘に過ぎない。

「……何のつもり?」

言ってみたが、クラヌウスが発する雰囲気と目に宿る色から薄々その目的を察した霧香は脳内に
危険を知らせる警報を盛大に鳴り響かせながらにじり寄るクラヌウスから距離をとるべく後退する。が、それも何時の間にか辿り付いた壁に背が着いたことで終わる。そして、

「ッッ!?」

霧香が、背が壁に着いたことに気取られたほんの一瞬の隙をついて一気に間を詰めたクラヌウス
は目にも止まらぬ早業で霧香の痩身を床に組み伏せた。

「や、め――――」

声をあげようとした霧香は、だが、瞬間声を詰まらせる。クラヌウスの手が、自分の身体をぴちりとフ
ィットしたドレスの上からまさぐり始めていた。生まれて初めて、彼女は形容し難い恐怖にその心を支配された。

「かっ、本当に貧相な身体だな、おい」ドレスの上に浮き出た彼女のあばらを、薄い胸にぽつねんと存在する二つの突起を手で嬲りながらクラヌウスは嘲笑するように霧香に言う。「この調子だと、足のほうも肉付きが悪いんだろうな、ええ?」

言って、クラヌウスは空いた手で霧香の裾の長いドレスをたくしあげ、その中に手を這わせ――太
腿からその上へと細い霧香の足を撫で回していき、やがてその手が足の付け根、その間に至った時、

「ひ、い、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッッ!?」

霧香は絶叫とともに彼女の心を覆っていた恐怖を暴発させた。その封じられていた強大極まりない
魔力と共に。


「何事だ!?」

ウィルニアと、明日以降の霧香のスケジュールについてのやりとりを終えたあとで彼女を退室させよ
うと促したその瞬間、ギリアムは突如起こった膨大な魔力の爆発を感じ取り声をあげた。しかし、何事だ、と叫んだ瞬間、彼はすでに冷静な頭脳で思考する。彼の記憶が正しければ、爆発の起こった方角にあるのは霧香の寝室であり、感じられた魔力のそれは霧香のものであった。そう理解が及んだ瞬間、彼は執務室を飛び出していた。滅多に慌てることのないギリアムの豹変に驚きそれでも追いすがろうとするウィルニアに構いもせず、彼は一気に霧香の寝室に向けて駆け、燻り煙を吐く寝室の前にたどり着き、

「これは何事だ!?」

吹き飛んだ扉の中に広がる寝室の惨状にもう一度声をあげた。彼の目に飛び込んできたものは、
先の霧香の魔力の暴走によるものなどとは比べ物にならないほどに無残な様相を呈している寝室であったはずの廃墟だった。なんとか彼に追いついたウィルニアに人を呼ぶように指示し、踏み入れた室内で目にしたもので、彼はこの場で何があったか察した。

「くそ、くそっ!」全身に火傷を負い、血を流しながらクラヌウスは呻くように喚いた。「あのアマッ! 殺す! 殺してやる!!」

こうも早く不安が現実のものになるとは。事の元凶であろうクラヌウスの無様な姿を一瞥するとギリ
アムは頭痛を堪えるように額に手を当てた。が、今はこの至らない愚か者はさておき。

「キリカ様は何処に――」




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